リアム・ハンプトン / Liam Hampton · 04:24 「VS Code を AI エージェントの 単一の入口 (single entry point) にする。 third-party、 background、 local、 remote ── 全部ここから。 開発者がどこに座ってるかを理解して、 認知負荷をどこまで下げられるかを設計してる」
Liam Hampton の AI Engineer Europe 2026 講演は、 「Tejas Kumar (IBM) が問題定義した harness の認知負荷」 を、 Microsoft 製品サイドからどう吸収するかという positioning talk になっている。 講演冒頭で Liam は前のセッション (Tejas の harness 講演) を引いて 「エージェントが あちこちから出てくる、 cognitive load の話は absolutely correct」 と認めたうえで、 「だからこそ VS Code を入口に一本化する」 という提案を組み立てる。 Microsoft が Marlene Mhangami の Playwright MCP 講演 と同じ AI Engineer Europe 2026 ステージに 2 人の DevRel エンジニアを送り込み、 「14 倍急増する commit」 「Cursor / Windsurf 等との単一入口競争」 という 2 軸を抑えに来ている事実が、 Microsoft の AI 戦略の輪郭を示す。
MEMEX 編集視点で重要なのは、 これが Microsoft の宣伝枠でありながらも 「3 種類のエージェントを ROI 観点で使い分ける」 という業界横断の概念フレームを提示している点。 GitHub Copilot 専用の話に見えて、 Liam 自身が 「これは Copilot 以外の AI agent にも全部 applicable」 と複数回明言する。 つまり Anthropic Claude Code、 Cursor、 Windsurf 等を使う開発者にとっても、 「local / background / cloud をどう仕分けるか」 の思考整理として読める。
ROI 不安と 「one-shot 信仰」 への現場反論
Liam が冒頭で整理する 業界の構造的問題:
- 「one-shot で素晴らしいアプリが作れる」 という developer 側の幻想 ── 講演で Liam は 「私は今でも こう信じている開発者と話す、 absolutely not the case」 と明言
- 経営側からの ROI 問い詰め ── 「これだけ AI infrastructure と tooling に投資して、 productivity boost はどこに?」 という質問の頻発
- Token 支出への警戒 ── Liam が引用するのは LinkedIn 経由で前日 viral になった 「 海賊風プロンプト LinkedIn 上で 2026 年に話題になった token 削減手法。 LLM への system prompt を 『海賊のように喋れ (talk like a pirate)』 で始めると、 出力が短く・断定的になり結果的に token 消費が減る、 という観察。 Liam Hampton は AI Engineer Europe 2026 講演で 『LinkedIn でこのレポが massive な popularity を獲得している、 ユーザーは intuitive で fun な方法で token 支出を回避し始めている』 と引用した。 詳細な原理は未検証だが、 業界が token economics をユーザー側で工夫し始めた象徴として扱われている リポジトリ」 ── chatbot に海賊風に喋らせると token 消費が減るという観察が viral 化
この前提整理は Intercom が 9 ヶ月で 2x 達成 や PFF の 2 ヶ月 25x deploy といった実証例と表裏。 「実証側」 が数字を出している一方で、 「未到達側」 では one-shot 信仰と ROI 不安が共存している。 Liam の提案は その gap を 「3 種エージェントの使い分け + 単一入口」 で埋める設計論。
3 種類のエージェント ── 関与度合いで仕分ける
講演の概念的中核。 Liam は エージェントを 「開発者がどれだけ hands-on で関わりたいか」 で 3 段階に分類する:
| 種別 | 関与度 | 適した task | 実装場所 |
|---|---|---|---|
| Local agent | 100% hands-on、 human-in-the-loop | Test 作成、 weeds に潜る作業 | VS Code 内、 ローカル機 (Claude / Copilot / 自前 LLM 含む) |
| Background agent | 50% (やりとり半分、 任せる半分) | フロントエンド UI 等、 中規模で 時間のかかる作業 | GitHub Copilot CLI、 git worktree 上の隔離フォルダ |
| Cloud agent | ほぼ hands-off | ドキュメント生成、 OSS 化、 README 作成 | GitHub Actions 上、 ネットワーク firewall 内 |
Liam 自身の使い分け宣言: 「test は自分で見たいから local、 front-end UI は arduous で時間食うから background に任せる、 ドキュメントは hate するから cloud に丸投げ」。 ROI の正体は 「人間が見るべき部分に時間を集中させる」 こと、 という整理。 これは Ali Abdaal の Claude Code 入門 での 「自分が嫌いな業務から AI に渡せ」 という business creator 視点と通底する。
Git Worktree が background agent を可能にする
Liam が demo で前提として説明するのが Git Worktree Git の機能で、 同一リポジトリの異なるブランチを 別々のディレクトリに同時 checkout できる仕組み。 通常 1 つのワーキングディレクトリでは 1 ブランチしか触れないが、 worktree を使うと メインディレクトリで feature-A、 サブディレクトリで feature-B、 と平行作業が可能。 AI エージェント時代に再評価されている理由は、 複数のバックグラウンドエージェントが互いを上書きせずに同時稼働できる隔離環境を低コストで作れる点。 git clone より軽量、 docker container より統合しやすい中間解 。 「ブランチが workspace 内のサブディレクトリ にマップされたもの、 自分のコードのチョップ (chop) に独自ブランチが紐づく」 と平易に説明する。
Background agent は worktree 上で動くため、 メインの作業ディレクトリを上書きせずに UI の生成を並行できる。 これは Anthropic Applied AI チームの long-running agent 設計 での 「fresh context window で毎回 starts」 「永続 artifact を真の記憶として使う」 という思想と同じ方向性を、 Microsoft / GitHub 側が worktree という低レイヤ Git 機能で実装している形。 「 git clone より軽量、 docker より統合容易 バックグラウンドエージェント用の隔離環境の選択肢には複数の階層がある。 (1) Docker container は最も隔離度が高いが、 IDE 統合が重い、 (2) git clone でリポジトリを別ディレクトリに展開する方式は ストレージ消費が二重になる、 (3) git worktree はリポジトリの .git ディレクトリを共有しながら ワーキングディレクトリだけ分けるため、 ストレージ効率と統合のしやすさで中間解になる。 GitHub Copilot CLI のバックグラウンドエージェントは worktree を採用、 これにより VS Code から worktree ディレクトリを開けば そのままエージェントの作業を視認できる 」 という中間解として位置づけられる。
Autopilot mode ── 「危険な便利」 を意識的に使う
GitHub Copilot CLI の background agent には現在 preview 状態の Autopilot mode GitHub Copilot CLI のバックグラウンドエージェント機能で、 2026 年 4 月時点で preview 段階。 エージェントが tool call を実行する際に 毎回ユーザーに承認を求めず、 自律的に進める動作モード。 Liam Hampton は AI Engineer Europe 2026 講演で 『great, wonderful, can be very dangerous』 と表現し、 『本番では abuse するな』 と注意喚起した。 プラン作成までは autopilot で進め、 pull request 作成前に必ず停止させて 人間がローカル test する、 というハイブリッド運用を Liam は推奨 がある。 Liam の率直な紹介: 「great, wonderful, can be very dangerous。 本番で abuse するなよ」。
Demo での運用例は示唆的で、 Liam は autopilot を有効にしつつも 「plan は autopilot で進めろ、 ただし pull request を作る前に必ず停止して、 ローカル test 方法を教えろ」 という instructions を入れる。 つまり 「自律性 100% は避けて、 critical な分岐点で human-in-the-loop に戻す」 という設計。 これは Pedro Rodrigues (Supabase) の skill 3 原則 での 「opinionated になれ」 と同じく、 agent の autonomy を 設計者が意識的に 制約する思想と通底する。
Demo ── 1 codebase × 3 同時稼働エージェント
講演の核心 demo は、 同じ Python CRUD アプリ (Product Store) に 3 種の問題を 3 種のエージェントで 同時並行で解決する流れ:
- Background agent (Copilot CLI + autopilot) ── GitHub Issue #25 を読んでフロントエンド UI を git worktree 上で構築。 「pull request を作る前に停止しろ」 と instructions、 ローカル test のため
- Cloud agent ── 「このリポジトリを OSS-friendly にして、 README + contribution guidelines を追加しろ」 と丸投げ。 GitHub Actions 上で実行される
- Local agent ── VS Code 下部の chat picker で local + Claude Opus 4.6 (発言内では 「Claudio plus four six」、 medium reasoning) を選択。 custom agent 「Test 書き手」 が事前定義されているのを使って unit test を生成。 test が走った後、 「エラーハンドリングが汚い、 ついでに直せ」 と to-and-fro
Liam の重要なメタ視点: 「これは speed up していない動画、 全部このスピードで動いた」。 1 名の開発者が 3 種のエージェントを 同時にオーケストレーションし、 それぞれの完了状況を VS Code 上で確認しながら次の作業に進む。 「1 つのコードベース、 3 つの問題、 3 つの別エージェントが同時に解決」 が、 cognitive load を実用的に抑えながら multi-agent 並列を実現する 1 つの prescription として提示される。
最後のセクションで Liam は worktree ディレクトリに切り替えてフロントエンド UI を実際に起動。 port conflict が出て少し慌てつつも、 元の地味な CRUD から見栄えのする product demo へと変わった画面を見せる。 この 「目に見える成果」 の demo は Microsoft のマーケティング技術として効いているが、 一方で 「multi-agent 並列の operational reality は こうやって port を踏むことから始まる」 という現場の生っぽさも残っている点が、 単純な vendor pitch から外れている。
Cloud agent の仕組みと安全装置
Liam が Q&A 想定で先回り説明するのが cloud agent の中身。 「GitHub Actions の中で走る、 isolated environment で safe」。
- 拡張 context は MCP server 経由 ── GitHub MCP server Model Context Protocol (MCP) は Anthropic が 2024 年末に公開した、 LLM と外部ツールを統一プロトコルでつなぐ仕様。 GitHub MCP server は GitHub のリポジトリ、 Issue、 PR、 Actions 等にアクセスする MCP 実装。 Playwright MCP server は browser 操作とスクリーンショット取得を MCP で提供。 GitHub Copilot の cloud agent は両者を組み合わせて、 ドキュメントの自動生成や 自動 UI test を実行する。 OSS とエンタープライズの両方で配布されている と Playwright MCP server を組み合わせて、 ドキュメント生成 + screenshot 取得 + 自動 front-end test まで実装できる
- ネットワーク firewall でホワイトリスト制限 ── エージェントが任意のサイトに通信するのを抑止
- Main ブランチへの直接 push 不可 ── PR 経由のみ、 安全装置が built-in
この設計は Intercom が Claude Code 全社展開で hundreds の laptop に internal cloud plugin を push out した ような エンタープライズ deployment の現実と接続する。 Intercom は自前で deployment 機構を作ったが、 GitHub Copilot cloud agent は同じ問題を 「GitHub Actions × MCP × firewall」 の 3 点セットで packaged 解にしている。 「自分で build するか、 Microsoft の packaged を使うか」 の選択肢を提示する位置取り。
VS Code 内の chat customization 制御面
Demo の後半で Liam が画面で示すのが、 VS Code の GitHub Copilot chat pane の歯車アイコンから開ける 「 単一ユーザー space の制御面 VS Code の GitHub Copilot chat pane の設定アイコンから開けるモーダル。 ユーザーが定義した agents (custom test agent 等)、 ビルトイン agents (ask / explore / plan)、 skills、 instructions、 prompts、 hooks、 MCP servers を 1 つの画面に集約して編集できる。 Anthropic Claude のプラグイン / hooks / instructions / skills も同モーダルに統合表示できるため、 VS Code は Microsoft 製品でない AI ツールの設定ハブとしても機能する設計 」。 ここで一覧 + 編集できる項目:
- Agents ── 自分が書いた custom test agent + built-in の ask / explore / plan
- Skills ── 「PR コメント対応」 「PR 作成」 等の組み込み skill、 jump in して編集可能
- Instructions ── 全 session で適用される指示
- Prompts ── プロンプトファイル、 skill 起動用も可
- Hooks ── event-driven 自動化
- MCP servers ── 接続済みの全 MCP servers が一覧
重要な政治的観察: 同モーダルには Claude (Anthropic) の plugins / hooks / instructions / skills も表示される。 Liam の言葉で 「VS Code と GitHub Copilot に restrict されない」。 Microsoft が VS Code を 自社 AI のロックイン装置にせず、 Claude や他社 AI tool もここから設定できる stance を取っている。 これは Cursor / Windsurf 等の 「独自エディタ」 競合に対し、 「VS Code は中立 platform」 という positioning を強める動き。
awesome-copilot OSS リポジトリ ── アクションアブルな共有資源
講演中盤で Liam が紹介する awesome-copilot Microsoft が運用する OSS リポジトリ。 GitHub Copilot 向けの custom instructions、 prompt files、 skills、 hooks、 agents の作例を集約し、 コミュニティから貢献を受け付けている。 短縮 URL は aka.ms/awesome-copilot。 Liam Hampton は AI Engineer Europe 2026 講演で 『directed at Copilot だが、 absolutely not just for Copilot、 他の AI tooling 用に massage して使える』 と明言した。 同リポジトリは MCP server としても encapsulate されており、 workflow 内から MCP 経由でアクセスできる リポジトリ (aka.ms/awesome-copilot)。 これが Microsoft 戦略の中で最も興味深い動き ── 「GitHub Copilot の skill / instructions / hooks を community で集めて OSS で配る」。
Liam の発言の重要部分: 「これは Copilot を direct したものだが、 absolutely not just for Copilot。 massage して他の AI tooling 用にも使える。 我々は コミュニティが Microsoft Things と GitHub Things 以外も使っているのを 知っている」。 つまり Microsoft 自身が自社製品縛りを公式に外している。 これは Pedro Rodrigues (Supabase) の Skill や Anthropic 公式の Skills 思想 と整合し、 「skill / instructions は中立 asset」 という業界共通認識への合流を Microsoft が選んだ証拠。
さらに awesome-copilot 自身が MCP server としても encapsulate されている。 workflow から MCP 経由で skill を取りに行ける、 という meta な構造。 これは Stephen Chin (Neo4j) の context graph や Lawrence Jones の AI SRE で見られる 「すべてが MCP 経由で agent から見える化される」 という業界トレンドの 1 piece。
着眼点
(1) 「VS Code = 単一入口」 戦略の競争構図
Liam が締めで明言する 「Visual Studio Code is a single entry point for AI agents」 は、 Microsoft の AI tooling 戦略の中核 thesis。 Cursor、 Windsurf、 Zed、 JetBrains AI Assistant 等が並ぶ AI エディタ競争に対し、 「VS Code を 1st-party + 3rd-party + background + local + remote の全 agent の 唯一の制御面 にする」 という positioning。 Anthropic Claude のプラグインも同モーダルから設定できる stance は、 「Microsoft 製品ロックインじゃなくて中立 platform」 という主張を補強する。 これは Anthropic と Microsoft の $30B Azure コンピュート提携 と表裏で、 Microsoft が Claude を Azure に乗せると同時に、 VS Code にも乗せる 二重戦略。
(2) 3 段階エージェント分類の業界横断的な価値
Local / Background / Cloud の 3 段分類は GitHub Copilot 限定の話に見えて、 実は agent の 関与度合いを ROI 観点で整理する universal な mental model。 Claude Code も同じ構造を持つ (terminal の対話モード = local、 Claude Code on PR via GitHub Actions = cloud、 sub-agent 並列 = background)。 PFF の post-engineer 組織 や Spotify の Honk V2 でも、 結局は 「どこまで人間が関与するか」 で agent 配置を変えている。 Liam の 3 段分類は、 これを 開発者個人レベルの 1 日の使い分け方として 言語化した形になる。
(3) Token economics への民衆的工夫の象徴
Liam が引用する 「海賊風プロンプト」 リポジトリの LinkedIn viral 化は、 token 経済が ユーザー側の bottom-up 工夫の対象になり始めた象徴。 これは Claude の利用量 80 倍急増 や Azure $30B コンピュート枠 といった infrastructure 側の話と裏返しの現象。 開発者は token 制約を 「与えられた予算」 として受け入れ、 創造的な回避手法を生み出し始めた。 これは AI 経済が成熟した証拠でもあり、 同時に Microsoft のような vendor が awesome-copilot のような共有 OSS で best practices を集約する正当性も生む。
動画の構成
- (00:00) 自己紹介、 GitHub Copilot + VS Code 利用者の手挙げ確認
- (00:30) Tejas Kumar の harness 認知負荷話を引用、 「absolutely correct」
- (01:15) ROI 問い詰めと one-shot 信仰、 token 支出への警戒
- (01:40) LinkedIn 経由の 「海賊風プロンプト」 viral 引用
- (02:20) 3 種類のエージェント ── local / background / cloud 紹介
- (03:00) Git Worktree の解説、 手挙げ確認
- (04:00) 各エージェントの ROI 別の使い分け方
- (04:40) 「VS Code = single entry point」 thesis
- (05:30) Demo 開始 ── Python CRUD アプリの紹介
- (05:50) Issue #25 を CLI background agent + autopilot に投入
- (06:45) Cloud agent に OSS 化 + README 生成を依頼
- (07:40) Local agent (Claude Opus 4.6 medium reasoning) + custom test agent で unit test 生成
- (08:30) エラーハンドリング修正の to-and-fro
- (09:15) 3 agent の完了確認、 PR 拡張で background agent の結果を視認
- (10:20) git worktree 経由でフロントエンドを起動、 port conflict 解決
- (11:30) Cloud agent の中身解説 ── GitHub Actions、 MCP、 firewall、 main ブランチ保護
- (12:30) Copilot 以外にも applicable、 custom agents / instructions / prompt files / skills / agents.md
- (13:20) VS Code 内 chat customization モーダルの実演 ── Claude 等の 3rd-party もここから
- (14:50) awesome-copilot OSS リポジトリ (aka.ms/awesome-copilot) と MCP server 公開
- (16:00) 締め: 「VS Code は AI agent の single entry point」
出典
- 「Cooking with Agents in VS Code」 ── Liam Hampton, Microsoft (AI Engineer Europe 2026, London)
- awesome-copilot OSS リポジトリ (aka.ms/awesome-copilot)
- GitHub Copilot 公式
- Visual Studio Code 公式