A Piece of Pi — コーディングエージェントを自社プロダクトに埋め込む (Tavoon × OpenCode)

AI Engineer Code Summit (NYC) 2026/05/11

Matthias Luebken / マティアス・ルベケン · 03:30 「コーディングエージェントは、 これからのソフトウェアシステムのコア構築ブロックになる、 そして既になりつつある。 私はそれに賭けてる、 多くの人もそれに賭けてる」

AI Engineer Code Summit (NYC、 2026/05 開催) のテクニカルトーク。 約 20 分。 登壇者は Tavoon マティアス・ルベケン氏が共同創業の欧州の小規模 AI スタートアップ。 「組織向けエージェント」 を構築。 まだ初期段階のスタートアップだが、 セールスプロセス自動化等の B2B エージェントを実装 の Matthias Luebken。 OpenCode/Pi をベースに、 顧客向けの企業エージェントを構築してる現場の人

Granola の Mehedi と同じセッションシリーズ (AI Engineer Code Summit NYC 2026/05)。 Granola が 「LLM 機能を本番運用する Product Engineer の戦術」 を示したのに対し、 Matthias は 「コーディングエージェントを自社プロダクトに埋め込む建築論」 を 20 分で展開する。 Tavoon は欧州の小規模スタートアップだが、 顧客企業のセールスプロセス自動化エージェントを実装してる、 という具体例が記事の中心。

話の構造は 3 層: (1) Pi agentcore とも呼ばれる、 ミニマルなコーディングエージェントフレームワーク。 OpenCode などより上位のエージェントツールが、 この Pi (agentcore) を基盤として使う。 オープンソース、 TypeScript 製、 「リッパー開ける、 中身を弄れる」 ことが設計目標 (= agentcore、 ミニマルな TypeScript エージェントフレームワーク) の理解、 (2) OpenCode SST 社が開発する OSS のコーディングエージェント。 Pi/agentcore を基盤に構築。 Claude Cowork や Cursor、 Claude Code に対する OSS 代替として注目される。 マルチチャネル、 プラグイン機構、 サブエージェント、 ゲートウェイサポートなどを持つ がそれをどう拡張してるか、 (3) 自社プロダクトに同じ仕組みを埋め込む ベストプラクティス。

MEMEX 編集視点で重要なのは、 これが vibe coding の 「埋め込み層」 を補強する こと。 Karpathy/Boris/Schluntz は 「コーディングエージェントを使う」 視点、 Mehedi (Granola) は 「LLM 機能を本番運用する」 視点、 Matthias (Tavoon) は 「コーディングエージェントを自社プロダクトの中に埋め込む」 視点。 業界の景色を 5 階層目まで広げる位置にある。

着眼点

Ken Thompson の格言と 「コーディングエージェントの単純さ」 (01:50 - 03:00)

Matthias の出発点。 Unix 発明者 Ken Thompson の名句 「Write programs that do one thing and one thing well (1 つのことを上手にやるプログラムを書け)」 を、 コーディングエージェントに適用する。 「これが、 我々にとって有利に働く」 (02:00)。

具体例として Claude Cowork の Excel 連携スキルを引く。 「Cowork が Excel を直接操作してる? 違う。 小さな CLI のセット — Pandas、 OpenPyXL、 LibreOffice の機能 — を組み合わせて、 自社スキルとしてパッケージしてる」 (02:30 - 03:00)。 つまり、 「巨大なエージェント」 ではなく、 「小さな単純なツールを組み合わせて使うエージェント」 が設計の正解、 という主張。

「Make it easy for coding agents」 — 建築パターン (03:30 - 04:40)

Matthias が前夜の Ivan との会話で気づいた建築パターン。 「コーディングエージェントが使いやすいように設計せよ」 (03:30)。 抽象的に聞こえるが、 具体的には: 「複雑にしようとせず、 コーディングエージェントが何を得意とし、 どうしたらアクセスしやすいかを考えて、 自社システムを設計する」 (03:45)。

これは Schluntz の 「葉ノード戦略」 と同じ景色を、 「自社プロダクトの API 設計」 の文脈で見ている。 Schluntz は社内コーディング、 Matthias は顧客企業向けエージェントの実装、 両者とも 「エージェントが扱いやすい単位に切る」 ことを核心に置く。

Pi (agentcore) の構造 — 「ツールをループで動かす」 だけ (05:00 - 06:30)

Pi (= agentcore) のミニマルさが論点。 Matthias の説明: 「エージェントとは何か? LLM がツールをループで動かす、 それだけ。 目的、 コンテキスト情報 (agents.md など)、 ツールコール、 結果、 ループ。 残りはマジック」 (05:30 - 05:55)。

Matthias の助言: 「カーテンを開けて (don't open the curtain)、 中身を弄れ」 (06:00)。 つまり 「LLM をブラックボックスとして扱わず、 内部を直接弄って自分の理解を作れ」 という、 Granola の Mehedi と完全に同じ Product Engineer の姿勢。

具体的な実装パターン: TypeScript の Agent クラス、 イベントシステム、 ツール呼び出しのフック (before tool call、 after tool call)。 「権限ベースアクセス制御、 エンタープライズ機能、 何でもフックに入れられる」 (07:30)。

OpenCode の拡張機構 — UI まで覗き込む (08:30 - 12:20)

Pi (agentcore) を OpenCode が拡張する形を解説。 「OpenCode は通常のエージェントと同じく、 ツールをループで動かす。 でも今度はランタイムとシェル — bash がデフォルト — を持つ」 (08:30)。

Peter (おそらく Peter Steinberger) のエピソードが秀逸: 「彼が OpenCode に音声メッセージを送った。 OpenCode は当時音声を理解しなかった。 でも何をしたか? 異なるツールを組み合わせて、 最終的に FFmpeg をローカルマシンで実行して、 音声を処理した。 外から見ると魔法に見えるが、 内側は単なるツールコール」 (09:14 - 10:00)。

OpenCode の特徴的な拡張: UI インタラクション。 「セッションイベント、 UI インタラクション、 両方とも拡張可能。 ターミナルだけでなく、 ドロップダウン、 選択など、 UI コンポーネントとして拡張機構が機能する」 (11:30 - 12:00)。 そして Web 版への移植も Pi が自動で書いてくれる — 「Pi に頼んだら、 同じコマンド・同じ選択を持つ Web UI が生成された」 (12:20)。

Tavoon の実装事例 — セールス RFP 処理エージェント (15:00 - 19:30)

動画のクライマックス。 Tavoon が顧客企業向けに構築した実例。 「セールスプロセス — 顧客から提案依頼 (RFP) のメールが来る、 という業務」。 アーキテクチャ:

  • 受信箱の監視: メールが来ると、 ゲートウェイで顧客別エージェントに振り分ける
  • 顧客 1 社につき 1 エージェント: それぞれが agents.md (汎用ハーネス) + customer.md (顧客固有の特殊事情、 アクセス権、 割引情報等) のコンテキストを持つ
  • セッション再利用: ケースごとに過去のセッションを参照、 文脈を維持
  • ツール (CLI として提供): CRM・ERP との対話用 CLI、 サンドボックス内で実行
  • 出力: ユーザーは Email クライアントに留まり、 ドラフトメールが Gmail の下書きとして生成される。 admin UI は不要

決定的な設計判断: 「ユーザーは Email + 下書きに留まる、 ツール切り替えなし」 (18:50)。 「裏ではエージェントが多数働いてるが、 ユーザーには見えない」 (19:30)。 これは Granola の 「最終プロダクトがマジックのように感じられる」 と同じ UX 哲学。 ブラックボックスを覗き込んでから、 ユーザーには魔法を提供する。

サンドボックスとセキュリティ — NVIDIA OpenShell の言及 (17:30 - 18:00)

質疑応答での重要な論点。 「サンドボックスについて、 まだ取り組み始めたばかり。 でも NVIDIA が最近発表した NVIDIA OpenShell 2026 年に NVIDIA が発表したエージェント向けのセキュアシェル / サンドボックス仕様。 OpenCode 周りのエージェントの実行を、 セキュアな境界内で行う仕組み。 業界の標準化候補の 1 つとして注目される ポリシー — エージェントを保護する 1 つの方法。 我々も検討中、 皆さんも調べる価値あり」 (17:50 - 18:00)。

Trigger.dev の Firecracker VM 同時並行スナップショット と並べると、 「エージェントの実行環境を VM レベルで隔離 + 監査」 という業界の収束が見える。 個別のサンドボックス提案 (NVIDIA OpenShell、 Firecracker、 OpenCode のシェル抽象化) がエコシステムとして組み合わさる方向。

関連記事

重要な引用

  • 「コーディングエージェントは、 これからのソフトウェアシステムのコア構築ブロックになる」 (03:30)
  • 「Ken Thompson の 『1 つのことを上手にやるプログラムを書け』 は、 エージェント時代に再来する」 (01:50)
  • 「Make it easy for coding agents — エージェントが扱いやすいように自社システムを設計せよ」 (03:30)
  • 「エージェントとは LLM がツールをループで動かすだけ。 残りはマジック。 カーテンを開けろ」 (05:30)
  • 「OpenCode が音声メッセージを処理できた理由 — FFmpeg をローカルで実行するという発想。 外からは魔法、 内側はツールコール」 (09:30)
  • 「顧客 1 社につき 1 エージェント、 agents.md + customer.md でコンテキスト管理」 (15:50)
  • 「ユーザーは Email + 下書きに留まる、 ツール切り替えなし。 裏ではエージェントが多数働いてる」 (18:50)
  • 「Pi はティンカリング (中身を弄る) のために完璧。 ミニマル、 リッパー開けて、 部品を組み合わせられる」 (19:50)

動画の構成

  • (00:00) Pi の紹介、 「fuck around and find out era」 (Mario からの引用)
  • (01:50) Ken Thompson の格言と Claude Cowork の Excel スキル例
  • (03:30) 「Make it easy for coding agents」 建築パターン
  • (05:00) Pi (agentcore) の構造 — Agent クラス、 イベント、 フック
  • (06:30) CRM lead qualifier の TypeScript 実例
  • (08:30) コーディングエージェント = エージェント + ランタイム + シェル
  • (09:14) Peter の音声メッセージ → FFmpeg 自動実行エピソード
  • (10:00) OpenCode の拡張機構 — セッションイベント + UI インタラクション
  • (11:30) UI コンポーネントの拡張、 ドロップダウン、 選択
  • (12:20) Web UI への移植 — Pi に頼めば自動生成
  • (12:49) OpenCode のパッケージ構成、 マルチチャネル / サブエージェント
  • (15:00) Tavoon の RFP 処理エージェントの実装事例
  • (15:50) 顧客 1 社につき 1 エージェント、 agents.md + customer.md
  • (17:00) ツールを CLI として提供、 サンドボックス、 ドラフト生成
  • (17:30) NVIDIA OpenShell によるサンドボックス検討
  • (18:08) 完成された UX — Email + ドラフトに留まる、 admin UI 不要
  • (19:30) Key takeaways — コーディングエージェントが核となる時代
  • (20:00) 終了

出典

A Piece of Pi — AI Engineer 公式チャンネル (YouTube)

関連リソース:

用語集

Pi (agentcore)
ミニマルなコーディングエージェントフレームワーク。 TypeScript 製、 オープンソース。 OpenCode などより上位のエージェントツールが、 この Pi (agentcore) を基盤として使う。 「Agent class、 イベントシステム、 フック (before/after tool call)」 などの基本構造のみを提供。 Matthias の推奨: 「カーテンを開けて中身を弄れ」。
OpenCode
SST 社が開発する OSS のコーディングエージェント。 Pi/agentcore を基盤に構築。 Claude Code、 Cursor、 Claude Cowork に対する OSS 代替として注目される。 マルチチャネル ルーティング、 プラグイン機構、 サブエージェント、 ゲートウェイサポート、 UI 拡張など。
Tavoon
Matthias Luebken 氏が共同創業の欧州の小規模 AI スタートアップ。 「組織向けエージェント」 を構築。 顧客企業のセールスプロセス自動化など、 B2B エージェントを実装してる。
NVIDIA OpenShell
2026 年に NVIDIA が発表したエージェント向けセキュアシェル / サンドボックス仕様。 OpenCode 周りのエージェントの実行を、 セキュアな境界内で行う仕組み。 業界の標準化候補の 1 つ。
agents.md / customer.md
エージェントのコンテキスト管理に使うマークダウンファイル。 agents.md は汎用ハーネス (役割、 動作原則)、 customer.md は顧客固有の特殊事情 (アクセス権、 割引、 ビジネスロジック等)。 Tavoon のセールスエージェント実装で採用。
comment is stripped from the HTML output. */}